安住安楽が悪の根源

行徳哲男さん「キェルケゴールは裕福な家の育ちですが、父親が家政婦を手籠めにして産ませた子供でした。さらに、生まれながら脊椎の病気を煩い、屈折した青春時代を送りました。心配した父親は、彼をデンマーク郊外のジーランドという湖の畔に転地させまし…

なんとなく生きていないか

行徳哲男さん「キュルケゴールはなぜ嫌われたのか。毎週日曜日に教会の前でバラまいたビラのせいでした。デンマークは宗教国家ですから国が教会を建て、牧師は公務員扱いされます。彼はその国教を『瞬間』というビラで攻撃したのです、『あなたたちは月曜か…

既に全部備わっている

玄侑宗久さん「だから、毎日毎日、十分人生を楽しんだ、将来に貸しは残していないと言える状態にしていくべきじゃないかと思うんです。そう思うために禅では『知足』という言葉を使います。既に全部頂いて備わっているわけですからね。例えば何か怪我したら…

将来に貸しはない

玄侑宗久さん「では、見えない因果や縁起に対してどうするか。それは、今日なら今日、この一時間なら一時間で生まれて死ぬっていうふうに区切ってしまうことだと思うんです。独立した今日、独立した今であって、連続していないと考えるわけです。その考え方…

否定語の多い人は

渡辺尚さん。「仕事や人生に成功する人、失敗する人には驚くほど共通した点があることに気づきました。一つは会社や上司への愚痴、悪口、不平不満などマイナス言葉、否定語の多い人は人生でも仕事でも決してうまくいかないという点です。レールを外れ辞めざ…

『惜福』の工夫

幸田露伴さん。「幸福か、不幸かというのも、風が順風か逆風かと同じ。つまりは主観による判断で、どちらかに定まっているわけではありません。『幸福を得る人』と『そうでない人』を比べてみると、その間に微妙な行動の違いがあるようです。第一に、幸福に…

よい妄想の効用

永田勝太郎さん。「ヴィクトール・フランクル先生がアウシュビッツ収容所で家族全員を殺され、いつガス室へ行けと言われるかもしれない中を生き抜けたのは、基本的に楽観主義者だったから。アウシュビッツでチフスにかかった先生は高熱を発しました。今夜も…

練達は希望を生ず

加藤一二三さん。「私の場合には9年後に名人になり、願いが叶えられたわけですが、この9年が長いか短いかは私にはわかりません。中には神様に20 年も30年も願い続けていらっしゃる方もいます。願いがいつ叶えられるかは人間にはわからない。しかし神様はそ…

信仰は楽観を生む

加藤一二三さん。「でも、負けた直後に、近い将来にたぶん名人になれるだろうという予感がしたんです。どうしてそんなに楽観的になれるのか。キリスト教の信仰と関係があるのかもしれません。信仰をするということは、神様を認める、つまり人間を超える存在…

幸福は集合的な現象

内田由紀子さん。「繰り返し述べてきた考えの一つは、幸福は『ごく個人的』なものと考えられがちであるが、実は社会や文化の影響を大きく受ける、『集合的な現象』でもあるということである。文化や社会という環境のなかで学習され、伝達され、共有される『…

幸福を感じる力

内田由紀子さん。「GHNは、第四代国王が1970年代に『ブータンはGDPよりGNHを大切にする国にしたい』といったことに始まるといわれている。経済成長を目指しても人々が幸せにならないのであれば、経済成長というのはもしかすると緩やかでもいいかもしれず、逆…

若者の幸福感の変化

内田由紀子さん。「ブータンの幸福感は、いわゆる北米系の『獲得志向』の幸福感とはとても異なっている。もちろんブータンでも良い教育を受けること、あるいは自尊心を高くすること、労働意欲や経済状態は大切にされている。しかし、最も重視されているのは…

若者の幸福感の変化

内田由紀子さん。「こうした社会状況の中、若者の『幸福感』は変化している。現在の50代以上の『親世代』の価値観であった『努力して豊かになろう』というものはもはや若者の目標や願いとはなり得ない。『親よりも稼げるようになりたい』という意識は世界各…

心のあり方は二階建て

内田由紀子さん。「日本の心のあり方は今、二階建ての家のようになっているのではないだろうか。一階が協調性なら、二階は独立性である。協調性が長く根づいてきた一階の基礎部分だとすれば、平屋建てだった日本の心のあり方に、グローバリゼーションと市場…

ソーシャル・キャピタル

内田由紀子さん。「ソーシャル・キャピタルは、平たくいえば個人あるいは社会のなかで醸成される『つながりの力』である。頼ることができる親しい人が近所にいる。あるいは滅多には会えないが、遠方に情報交換をできる友人がいる。これらはいずれも『つなが…

固定理論と拡大理論

内田由紀子さん。「人間の能力は生まれながらにしてある程度『固定的・永続的』であるという考え(固定理論)を持っている場合、ある領域における自分の能力に自信をもっていなければ、その領域での努力を継続することは難しい。それゆえ、課題に対する自分…

相互協調的自己感

内田由紀子さん。「北米で繰り返し検証される自己高揚傾向(自分が他者よりも優れていると考える傾向)などはこの表れともいえるだろう。これに対し、日本において主にみられる相互協調的自己感は、①人は他者や周囲の状況などと結びついた社会関係の一部であ…

相互独立的自己観

内田由紀子さん。「相互独立的自己観とは、①人は他者や周囲の状況から区別された属性によって定義される『主体性』を持った実体であり、②人の行動の原因となるのは内部にある属性そのものであり、③対人関係は互いの相手に対する関心や、向社会的動機づけに基…

人生楽ありゃ苦もあるさ

内田由紀子さん。「バランス志向的幸福は、さまざまな形でわたしたちの物の考え方に影響を与えている。自らの人生だけではなく、他者の人生や出来事に対する予測にもバランス志向的解釈がみられる。『幸せすぎるとそのうち良くないことが起こるのではないか…

人並みの日常的幸せ

内田由紀子さん。「逆に不幸せ感についても同様の調査を行ったところ、アメリカ人の記述の9割が悪い側面についてのものであったのに対し、日本では『不幸せには美しさがある』『不幸せは、自己向上のきっかけとなる』など、肯定的要素を30%ほど見いだしてい…

バランス志向的幸福

内田由紀子さん。「日本では、幸せな状態はその時々で変化するものであり、良いことばかりが続く人生というのはなかなかない、という価値観が生活の中で根づいている。物事には良い面と悪い面の両面が同時に存在するという『陰陽思想』の影響がある。あまり…

足るを知るの精神

内田由紀子さん。「欧米において個の内面的望ましさの最大化によって幸福感が得られるとすれば、自らのなかに望ましい属性を見いだし、『誇り』をもってそれを表現していくことが必要となるであろう。これに対して東洋においては、幸福感とはそれを追求しな…

望ましさの最大化

内田由紀子さん。「欧米、特にプロテスタントの流れを組む北米中流階級の社会で幸福感が自己の内的望ましさの最大化によって定義されている事の背景には、個々人が『神に選ばれた者』と自覚し、それを証明する為に禁欲的に働く事が人生の目標であり『善』で…

幸福感の定義の背景

内田由紀子さん。「従来の心理学の理論においては、主体的幸福感とは自らの属性・状態・環境に対する肯定的な認知的・感情的判断とされてきた。つまり、自らの中に『良い』と評価されるような事象が多く存在していることが幸福を感じる条件となる。このよう…

幸福感の意味の違い

内田由紀子さん。「北米では自己の能力の発現である『個人的な達成』が幸福の主な要素であり、自分に誇りを持ち、達成感を味わうことではじめて幸福が実現するとされているのに対し、日本においては幸福が関係性の結びつきの確認として定義されている。幸福…

文化的な状況と

内田由紀子さん。「価値観は同じ人の人生の中でも、様々な状況によって移り変わる。幸福とは社会・文化的な状況と、個人の性格特性や志向性などの価値観を反映するものである。アメリカにおいては、『幸福な人物とは、若く健康で、良い教育を受けており、収…

一律ではない幸福

内田由紀子さん。「幸せの形は一人ひとり違っている。人類は古今東西を問わず同じように幸せを求めている訳ではない。しかし一方で共通点も多くある。不幸せな時間よりも、幸せな時間を過ごすこと。意義深く温かい人生を送ること。安全かつ快適に暮らすこと…

選択は競争を生む

内田由紀子さん。「個人が『家』や『会社』から自由になり、人生にとって大切な選択が個人のものとして保障される社会は、個人の権利意識を守り、未来に希望をもって人々が幸せを得るための選択をすることを推奨する近代社会のあり方として、いまやその是非…

結婚の選択の自由

内田由紀子さん。「1956年に『ここに幸あり』という松竹映画が公開されているが、この映画の内容は女性が自由な恋愛と個人の意思で結婚すること、そこから『幸』を得ることができるのだという現代的意識の幕開け的なものになっている。1970年に見合い結婚の…

個人の選択の自由

内田由紀子さん。「イングレハートはさまざまな国の幸福感の分布と、時系列での変化を分析し、個人の選択の自由(職業選択の自由など)が上昇することが、国の幸福度を高める要素となっていことを論じている。広井の議論に基づけば、選択の自由度が幸福感を…