フロネシスの構成能力

野中郁次郎さんによると、近年、政治学の世界では哲学者アリストテレスが唱えた「フロネシス(賢慮)」という概念に関心が高まっているという。「フロネシスとは、そのときの文脈や状況に応じて最善の判断と行為ができる実践的な知恵をいう。ただの思慮分別ではなく、妥協を超えたダイナミックなバランス感覚と実行力だ。」と野中さん。賢慮を構成する6つの能力とは、(1)善悪の判断基準を持つ能力、(2)場づくりの能力。他者と文脈を共有し、共感を醸成できるかどうか。(3)現場での直感力。個別具体の事象の奥にある本質を見抜く力。(4)個別具体と普遍を往還し、相互変換する能力。(5)政治力。普遍的な概念を善に向かって実践するには、清濁併せのむ政治力も必要。(6)賢慮の組織的育成、だという。理解はできるが実践は難しそう。

補足:野中郁次郎さんによるフロネシスの解説で、こちらのほうが理解しやすいので。「(1)善悪の判断を適切に行うことの出来る能力、(2)他者と文脈を共有する場づくりの能力、これは、相手を理解し、共感を引き出すことであり、人を動かすことに通ずるものである。また、現場を回るなどして、(3)個別の複雑な事象の背後にある本質を直感的に見抜く能力、そしてそれを組織に敷衍するため、(4)自らがつかんだ本質を夢やビジョン、物語として誰にでもわかる言葉で伝える能力も必要である。これは、個別・主観・ミクロの領域である暗黙知と、普遍・客観・マクロの領域である形式知との間を往還、あるいは相互変換する能力である。さらに(5)そのビジョン、概念を善に向かって実現する政治力と、(6)賢慮そのものを配分・育成する能力が求められる。」