『国民文学』とは

nakatomimoka2009-10-31

内田樹さん。「それはたぶん、『坂の上の雲』が『国民文学』だからだろう。『国民文学』とはどういうものを言うのか。ヴィクトル・ユゴーの『レ・ミエラブル』はフランスの、ドフトエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』はロシアの、マーク・トウェインの『ハックルベリー・フィンの冒険』はアメリカの、それぞれ国民文学である。巨大なスケールをもった政治劇の場合もあるし、市政の人々の生活を活写した物語の場合もある。そこに共通するのは、つよい人間的な『癖』をもった主人公を登場させ、『われわれはこういうタイプの人間が好きだ』という宣言をなしているという点である。そのかなり偏りのある人間的選考が、長期にわたって国民のふるまいや価値観に影響を及ぼし続けたとき、それは『国民文学』と呼び得るであろう」価値観に影響を与えるほどの文学を。