言葉と本音の関係も

nakatomimoka2014-10-05

篠田節子さん。「『巧言令色』どこが悪い?と、常々思っている。二十歳も年上の彼女とは小説教室で出会った。会うたびに彼女には褒められた。最後の一押しは、『これ、すばらしい作品よ。この私が、どーん、と太鼓判。新人賞にお出しなさいよ』だった。かくして、『どーんと太鼓判』の作品を私は文学新人賞に応募し、予選落ちする。しかし、『どーんと太鼓判』を信じた私は、落ち込むこともなくその短編を長編に直し、別の文学賞に応募した。結果は入選だった。真っ先に、彼女に電話をした。『あら、私、うれしくて』と言ったきり、彼女の言葉が途切れて、嗚咽に変わった。人と人との関係も、言葉と本音の関係も、驚くほどフレキシブルだ。ただのの社交辞令のお世辞も、10回も発すれば本音になり、社交から始まったつき合いが友情に変わる」褒めようか。