能力と度量

nakatomimoka2017-01-10

垣根涼介さん。小説『光秀の定理』より。「たしかに光秀には才幹はある。そしてその才幹を支える気概もある。しかしその気概とは、広く天下を望んで自ら進んで持ったものではなく、多分に宿命付けられたものであったろう。美濃源氏名流としての矜持、そして一族の離散という憂き目からの失地回復への自責の念。つまり(我は、こうありたい)と思うより、(我はこうあらねばならぬ。いや、あるべきだった)という責務の意識が、光秀の行動原理のすべてにおいて先行していた。それが光秀を駆り立て、動かし、信長の後押しもあって、晩年には畿内でも最大勢力の大名に成り上がった。光秀自身、その境遇を喜んではいたが、しかし決して楽しんではいなかったように見える。仕事ができる能力と、それを絶え間なく受け入れることの出来る度量は、また別の問題なのだ」度量。