現実からの逃避

nakatomimoka2018-06-28

島田雅彦さん。「ところが、人間は愛ばかりにかまかけては生きていけません。色恋の風流を極め、女性に愛されて一生を終えるのも男性の生き方のひとつの理想とはいえますが、そうした立場はおおよそ社会や組織といった集団の論理と相いれることがない。権謀術数と立身出世のゲームに必死に生きる男たちからは、なんと軟弱な生き方なのかと、蔑まれもするでしょう。しかしここに、四つ目となる(小説を)書く動機が隠れています。『現実からの逃避』がそれです。(略)色恋に生き、哲学を追求して、言語による理想的なユートピアを構築することー。これは、ありていに言えば、厳しい競争社会たる現実からの逃避以外のなにものでもないでしょう。しかし立身出世という、絶対と思われた価値観とは別のオプションを提示することができた」世俗の権力闘争と別に。