心を慰謝するもの

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町田康さん。「幸福な人がいるということは、どこかで誰かがその分の不幸を背負っているのである。それなら背負う側ではなく背負われる側になりたい、と考えるのが人情で、それは責められることではない。しかしそうなると自然に競争となり、競争となればそこに優勝劣敗の法則が生まれ、その結果、多くの者は背負う側に回される。真の幸福は此の世に存在しない、ということを知っていれば、それ自体は大した問題にはならないのだが、それに加えて、背負わされる側、負け組に編入された敗北感、挫折感、劣等感が人を苛み、魂を蝕む。それを慰謝して心を一時でも慰めてくれるものが人の愛、自然の美しさ、信仰を持つ人なら神仏の慈愛、芸術やなんかであるが、その中でももっとも手っ取り早く、かつ強力に作用するのが、そう酒である」幸福は単体で存在せず。