幸福の時間

柿内尚文さん「今の幸せを選択すると得られるのが『幸福の時間』です。抽象的かもしれないですが、以下の5つの『感』が幸福につながる大事な要素です。①満足感、②充実感、③達成感、④快感、⑤安らぎ感。一方で、将来の目標達成のための選択をするのが『投資の時間』です。自分がこの先クリアしたい目標を達成することを最優先した選択です。セリグマンは持続的な幸せの重要性を説き、その幸せは5種類の幸福で構成されていると説明しています。①楽しい、うれしい、感謝、充実感、感激、②時間を忘れて没頭する、③良好な人間関係、④人生の目的や意義、⑤何かを達成する、成し遂げる。この5つの要素があることが幸福を持続させるポイントだそうです。このような研究成果から見えてくるのは、長く続く幸せのポイントは『状態』にあるということです」幸福感。

トロッター・マトリックス

シーナ・アイエンガーさん。「そのプロセスを作るために、こんなことをやってみた。全工場の製造部門に、『君たちの工場が世界に誇れる点は何か?』と尋ねたんだ。たとえ製造部門全体が世界クラスでなくても、例えば在庫回転率や資金管理、人材活用など、どこにも負けない点が必ずあるはずだ。できるだけ単純なやり方にしたかった。『五段階評価の5が「成功法則がある」、1が「まったくの手探り状態」だとして、君たちの工場は何点になるのか?』在庫管理、生産性など、製造の重要分野について、自分たちの工場を採点してもらい、それを私の方で集計した。こうして生まれたのが、『トロッター・マトリックス』だ。1990年代にGEにいた人はみな知っている。トロッター・マトリックスは、成功法則を社内全体で共有するという目的に使われた」共有。

ベスト・プラクティスの移殖

シーナ・アイエンガーさん。「こうしてロイド・トロッターは1970年にGE照明部門の現場修理技術者として働きはじめ、1990年にはGEインダストリアルのCEOとして、世界中の工場を統括していた。彼によれば、すべては単純な観察から始まったという。私が管轄の工場を調べ始めた頃は、全世界に60の工場があってね。ほうぼうの工場を訪れるたび、舌を巻いたものだよ。どの工場にも、誰もやっていない画期的な手法を実践する人たちがいたんだ。そこで私は考えた。社員同士で社内コンサルタントをやったらどうだろう? ヨーロッパの成功法則(ベスト・プラクティス)をアメリカへ、メキシコの成功法則をヨーロッパへ移植する方法はないだろうか? そして、こう思った。それをやるにはルールに基づくプロセスが必要だ、とね」社内コンサルを。

情熱テスト

シーナ・アイエンガーさん。「あなたが今後にいつ、どんな情熱を持つかを前もって確実に知ることはできない。この人間に関する基本的事実を踏まえて、次の『情熱テスト』をやる。『これは自分が当面かなりの時間をかけて取り組みたい課題なのか?』という問いに答える為のツールだ。まず、解決したい課題が見つかったら、それを3分から5分で説明する練習をしてほしい。課題を説明する文章(定義文)を紙に書き出し、何度も声に出して読んで、記憶にしっかり刻みつけよう。それから『巡業』に出て、25人に聞いて貰おう。友人や家族、同僚、たまたま居合わせた他人などをつかまえて、課題を説明しよう。25人に説明すれば、あなた自身がその課題にどういう気持ちを持っているかがはっきりする。あなたはわくわくしただろうか。それとも嫌になっただろうか」情熱。

創造性を刺激する空間

シーナ・アイエンガーさん。「創造性を刺激する空間について、2つのことが言える。第一に、気が散るものがなく、ひとりでじっくり考えられる場所があること。第二に、コーヒーメーカーや冷水機の周り、休憩所など、人と気軽に出会える場所があること。それだけで十分だ。たしかに観葉植物は気分を上げ、暗く陰気な場所は気分を下げるだろう。だが創造性に影響を与えるのは、あなたの周囲で起こることではなく、頭の中で起こることだ。食肉処理場は殺伐とした血まみれの空間だが、パー・クランはそこで最高のアイデアを得た。私たちは一日のうちの4時間ほど、起きている時間の約4分の1を、とりとめのない考えをめぐらせながら過ごしている。集中を要するタスクに取り組んでいるときさえ、心はさまよう」ひとりでじっくりと、人と会える機会と場所。

オフィス空間とアイデア

シーナ・アイエンガーさん。「グーグルが草創期に入居していた地味な物理的空間は、彼らのアイデアの質には何の影響もおよぼさなかった。ありふれた場所で創造的なアイデアが生まれた例はいくらでもある。グーグルは、『非日常的な』環境が右脳を活性化する、とまで言っている。だが今では、それがただの俗説だということがわかっている。赤い水玉の壁紙の部屋で仕事をしたからといって、それだけでは新しい発想は生まれない。たんに、次に生み出すアイデアが赤い水玉の影響を受けるだけだ。創造性を最も促すのは、無地の壁だ。心がつながりを探して自由にさまようことができる。脳が邪魔されずに仕事をするには、刺激のない場所が必要だ。これを示す最良の実例が、ベル研究所にある。創造性は建物の設計とは何の関係もなかった」空間ではなかったか。

ブレストは箱の中の思考

シーナ・アイエンガーさん。「ブレインストーミングとは要するに、部屋にいる人たちの直接の経験をもとに、アイデアを出すことだ。ひとことで言えば、『情報の洗い出しと共有』でしかない。あなたも『今すぐアイデアを出して!』と誰かに言われたら、すでに知っていることをもとに考えるだろう。多様な経験を積んだ多くの人が集まってやる場合、ブレインストーミングは日常的な課題を効率よく解決する方法になる。なぜならチーム全員の経験の総和に、必要な解決策が全て含まれているからだ。だが、ヘンリー・フォードがエンジニアにブレインストーミングをさせなかったことに注目してほしい。フォードはエンジニアに命じて、使えるアイデアを世界中から探させた。パー・クランはそうやって食肉処理場の動くラインを探し当てた」知っていることなら。