全員に発言の機会を

シーナ・アイエンガーさん。「オズボーンとBBDOは、ブレインストーミングを使って第二次世界大戦中のアメリカで軍備拡大の必要性を啓蒙する活動や、GE、クライスラーアメリカン・タバコ、BFグッドリッチ、デュポンといった優良クライアントの広告キャンペーンのアイデアを次々と繰り出した。ところでオズボーンは何のためにブレインストーミングを生み出したのだろう。彼の悩みは、全社会議で若手社員からほとんど意見が出ないことだった。幹部が一方的に話すだけで会議が終わっていた。オズボーンはこれを解決するために、アイデア出しの『グループシンキング』セッションを毎週開き、全員に発言の機会を与えたのだ。彼自身が進行役を務め、若手社員に意見を求めることを忘れなかった」あくまで全員参加を促す手段として開発されたのがブレスト。

好奇心が強いこと

シーナ・アイエンガーさん。「研究では、多様な分野の創造的な人々に共通する人格特性が、たったひとつだけ特定されている。それは、好奇心が強いことだ。そして好奇心は、意識して身につけることができる。同じ事が、創造的な活動をやり遂げるのに必要な、粘り強さについても言える。粘り強さも、意識的に育む事ができる。正式な発想法としてのブレインストーミングが生まれたのは、1938年のことだ。大手広告代理店BBDOは、大恐慌で多くのクライアントを失い、経営の立て直し役に副社長のアレックス・オズボーンを指名した。オズボーンは新規顧客開拓のために、チーム全員を集めて、広告キャンペーンのアイデアを考える事にした。彼が考案したブレインストーミングは、社内で最も使われる発想法となり、その後世界中に旋風を巻き起こした」好奇心。

深沈厚重なるは

豊田良平さん。「『呻吟語』の冒頭には、『深沈厚重なるは、是れ第一等の資質』とありますが、この深沈厚重なる人物になるためにはどうしたらいいかということを呂新吾先生が、いろんな角度から書かれたものと思います。『深沈厚重なるは、是れ第一等の資質。磊落豪遊なるは、是れ第二等の資質。聡明才弁なるは、是れ第三等の資質』これが『呻吟語』の全巻を貫く思想です。深というのは、深山のごとき人間の内容の深さであり、沈は沈着毅然ということです。厚重は、重厚、重鎮と同じで、どっしりとしていて物事を治めるということです。上に立つ人は、それぞれの立場において重鎮することが必要です。言い換えると、その人が黙っていても治まるということです。あくまでも治まるのであり、治めるのとは違います。重厚は人間の幅が広く厚いということ」これを。

安定志向に入っては

大八木弘明さん。「知らず知らずのうちに安定志向に入ってしまったような気がします。優勝できなかった13年のうち6~7年くらいは、朝練でも何でもマネージャーに行かせて、自分は現場に行かなかったり、グラウンドにいて遠くから眺めているだけだったり。結局、練習姿勢や食事の量、体質、性格、強み、弱みなどすべてにおいて選手のことをきめ細かく見ていなかったんです。優勝していた頃は、例えば選手が朝練で走り込む際にずっと自転車で並走して指導していました。だからやっぱり安定志向はダメですね。常に挑戦して変化していかないといけない。選手たちにしてみれば、『ああ、監督はいつも朝グラウンドで待ってるだけやな』みたいな感覚と、『監督、本気だな』という感覚では、練習に取り組む姿勢に天と地ほどの差が開きます」本気の覚悟を示す。

『運』と『ツキ』は異なるもの

西田文郎さん。「すべからく成功者、一流といわれる人たちは運やツキを持っています。ただ、私は『運』と『ツキ』は異なるものだと思っているんです。『ツキ』というのは、チャンスを掴む能力ではないかなと。思いがけないラッキーが訪れて、それを活かした時に『ツイていた』という言葉を使うと思います。しかし、例えば一代で会社を起こし、成功された方などは『自分がここまで来られたのは、ツイていたからだ』とは言いませんよね。『自分には運があったからだ』と言うと思うんです。それはなぜか。これは若い頃に人生の師から教わったことなのですが、『苦しみを克服した人にしか“運”はないんだ』と。一代で大きなことを成し遂げた人は、自分の努力ではどうしようもない様々な逆境、ピンチを潜り抜けてきています」苦しみを乗り越えて運。

才能があっても

佐野俊二さん。「野球でも十年に一度の逸材と言われる選手が毎年のように出てくるじゃないですか。でも、その中のほとんどは一軍にも入れない、スターにもなれない。才能があっても努力しないからですよ。自分に才能があって、何をやってもピッとできてしまうから、それ以上の努力をしなくなるんです。やはり伸びる人間というのは、性格がいいと思うんですよ。それなりの才能があって、なおかつ人の言うことを何でも聞いて、もっと努力しようとする。それっていうのは、素直な人間でないとできないでしょうからね。あとは自分をどんな環境に置くかだと思います。やはり世界に出ると自分よりできる人間はいっぱいいることがわかりますから、そういう所で揉まれたほうがいい。才能プラス環境ですよ。後はハングリー精神。満たされた連中は苦労をしない」努力。

安住安楽が悪の根源

行徳哲男さん「キェルケゴールは裕福な家の育ちですが、父親が家政婦を手籠めにして産ませた子供でした。さらに、生まれながら脊椎の病気を煩い、屈折した青春時代を送りました。心配した父親は、彼をデンマーク郊外のジーランドという湖の畔に転地させました。そこには野性の鴨が飛んでくるのですが、鴨たちはおいしい餌に飼い慣らされて次第に飛ぶ力を失ってしまうのです。それを見たキュルケゴールは『安住安楽こそがすべての悪の根源だ』と言いました。ゲーテの言った『安住安楽は悪魔の褥』と同じです。戦後の日本人も経済の豊かさと平和に酔い痴れて安住安楽を貪ってきましたが、キュルケゴールはそういう生き方を厳しく攻撃し、飼い慣らされた太ったアヒルになるなと警告したのです」安住安楽を目指してしまいそうになるけれど、そうではなくて。