創造性を刺激する空間

シーナ・アイエンガーさん。「創造性を刺激する空間について、2つのことが言える。第一に、気が散るものがなく、ひとりでじっくり考えられる場所があること。第二に、コーヒーメーカーや冷水機の周り、休憩所など、人と気軽に出会える場所があること。それだけで十分だ。たしかに観葉植物は気分を上げ、暗く陰気な場所は気分を下げるだろう。だが創造性に影響を与えるのは、あなたの周囲で起こることではなく、頭の中で起こることだ。食肉処理場は殺伐とした血まみれの空間だが、パー・クランはそこで最高のアイデアを得た。私たちは一日のうちの4時間ほど、起きている時間の約4分の1を、とりとめのない考えをめぐらせながら過ごしている。集中を要するタスクに取り組んでいるときさえ、心はさまよう」ひとりでじっくりと、人と会える機会と場所。

オフィス空間とアイデア

シーナ・アイエンガーさん。「グーグルが草創期に入居していた地味な物理的空間は、彼らのアイデアの質には何の影響もおよぼさなかった。ありふれた場所で創造的なアイデアが生まれた例はいくらでもある。グーグルは、『非日常的な』環境が右脳を活性化する、とまで言っている。だが今では、それがただの俗説だということがわかっている。赤い水玉の壁紙の部屋で仕事をしたからといって、それだけでは新しい発想は生まれない。たんに、次に生み出すアイデアが赤い水玉の影響を受けるだけだ。創造性を最も促すのは、無地の壁だ。心がつながりを探して自由にさまようことができる。脳が邪魔されずに仕事をするには、刺激のない場所が必要だ。これを示す最良の実例が、ベル研究所にある。創造性は建物の設計とは何の関係もなかった」空間ではなかったか。

ブレストは箱の中の思考

シーナ・アイエンガーさん。「ブレインストーミングとは要するに、部屋にいる人たちの直接の経験をもとに、アイデアを出すことだ。ひとことで言えば、『情報の洗い出しと共有』でしかない。あなたも『今すぐアイデアを出して!』と誰かに言われたら、すでに知っていることをもとに考えるだろう。多様な経験を積んだ多くの人が集まってやる場合、ブレインストーミングは日常的な課題を効率よく解決する方法になる。なぜならチーム全員の経験の総和に、必要な解決策が全て含まれているからだ。だが、ヘンリー・フォードがエンジニアにブレインストーミングをさせなかったことに注目してほしい。フォードはエンジニアに命じて、使えるアイデアを世界中から探させた。パー・クランはそうやって食肉処理場の動くラインを探し当てた」知っていることなら。

全員に発言の機会を

シーナ・アイエンガーさん。「オズボーンとBBDOは、ブレインストーミングを使って第二次世界大戦中のアメリカで軍備拡大の必要性を啓蒙する活動や、GE、クライスラーアメリカン・タバコ、BFグッドリッチ、デュポンといった優良クライアントの広告キャンペーンのアイデアを次々と繰り出した。ところでオズボーンは何のためにブレインストーミングを生み出したのだろう。彼の悩みは、全社会議で若手社員からほとんど意見が出ないことだった。幹部が一方的に話すだけで会議が終わっていた。オズボーンはこれを解決するために、アイデア出しの『グループシンキング』セッションを毎週開き、全員に発言の機会を与えたのだ。彼自身が進行役を務め、若手社員に意見を求めることを忘れなかった」あくまで全員参加を促す手段として開発されたのがブレスト。

好奇心が強いこと

シーナ・アイエンガーさん。「研究では、多様な分野の創造的な人々に共通する人格特性が、たったひとつだけ特定されている。それは、好奇心が強いことだ。そして好奇心は、意識して身につけることができる。同じ事が、創造的な活動をやり遂げるのに必要な、粘り強さについても言える。粘り強さも、意識的に育む事ができる。正式な発想法としてのブレインストーミングが生まれたのは、1938年のことだ。大手広告代理店BBDOは、大恐慌で多くのクライアントを失い、経営の立て直し役に副社長のアレックス・オズボーンを指名した。オズボーンは新規顧客開拓のために、チーム全員を集めて、広告キャンペーンのアイデアを考える事にした。彼が考案したブレインストーミングは、社内で最も使われる発想法となり、その後世界中に旋風を巻き起こした」好奇心。

深沈厚重なるは

豊田良平さん。「『呻吟語』の冒頭には、『深沈厚重なるは、是れ第一等の資質』とありますが、この深沈厚重なる人物になるためにはどうしたらいいかということを呂新吾先生が、いろんな角度から書かれたものと思います。『深沈厚重なるは、是れ第一等の資質。磊落豪遊なるは、是れ第二等の資質。聡明才弁なるは、是れ第三等の資質』これが『呻吟語』の全巻を貫く思想です。深というのは、深山のごとき人間の内容の深さであり、沈は沈着毅然ということです。厚重は、重厚、重鎮と同じで、どっしりとしていて物事を治めるということです。上に立つ人は、それぞれの立場において重鎮することが必要です。言い換えると、その人が黙っていても治まるということです。あくまでも治まるのであり、治めるのとは違います。重厚は人間の幅が広く厚いということ」これを。

安定志向に入っては

大八木弘明さん。「知らず知らずのうちに安定志向に入ってしまったような気がします。優勝できなかった13年のうち6~7年くらいは、朝練でも何でもマネージャーに行かせて、自分は現場に行かなかったり、グラウンドにいて遠くから眺めているだけだったり。結局、練習姿勢や食事の量、体質、性格、強み、弱みなどすべてにおいて選手のことをきめ細かく見ていなかったんです。優勝していた頃は、例えば選手が朝練で走り込む際にずっと自転車で並走して指導していました。だからやっぱり安定志向はダメですね。常に挑戦して変化していかないといけない。選手たちにしてみれば、『ああ、監督はいつも朝グラウンドで待ってるだけやな』みたいな感覚と、『監督、本気だな』という感覚では、練習に取り組む姿勢に天と地ほどの差が開きます」本気の覚悟を示す。