一杯だけで帰ってはいけない

nakatomimoka2008-08-18

東理夫さん。「開けたてのバーで、上手に作られたよく冷えたマティーニを味わう時の喜びは、何度書いても書き足りないぐらいだ。夕刻のマティーニがなかったら、ぼくの人生は半分ないも同じだ。ところが開けたてのバーで飲むと言うことは、即ち夕食前の空腹時であるということなので、この強い酒を二杯も飲むとすぐに酔ってしまうのである。なら一杯でやめればいい、と思われるかもしれないが、これがそうもいかないのである。バーでは一杯だけで帰ってはいけない、ということを教えてくれたのは、新橋のバー「トニーズ・バー」の今は亡きアントニーさんだった。それがバーテンダーへの礼儀であり、飲む側にとってもきちんと味わうためのルールであると言うのだ」酒飲みでない者にとっても、夕刻のバーの扉の向こうに喜びはあるのだろうか。