脳内モルヒネ

池谷裕二さん。「オピオイドは別名『脳内モルヒネ』です。強烈な快感を引き起こします。放尿が爽快感と恍惚感を伴う理由はここにあります。登山やマラソンは、身体が人工的な危機に曝されている疑似的状況です。時にこの危機感がクセになる常習者がいるのも、やはりオピオイド系の作用です。スポーツの心地よさは、大抵恍惚への耽溺そのものです。外敵に襲われた動物もおそらく同じです。無痛と同時に恍惚を伴っている可能性があります。結局は逃げられず捕食者に食べられてしまう時、意識明瞭なまま身体が食いちぎられていきます。しかし私たちが想像する程には、苦しんでいないと考えられています。武士道では、体の正面に受けた『向こう傷』は名誉の傷で、『後ろ傷』は恥の傷です。敵に正対する雄姿は、恍惚の極到に浸る自己陶酔なのかもしれません」陶酔。