ピンチの恍惚

池谷裕二さん。「脳は痛みを消すための専用回路を備えています。緊張状態になるとこの回路が作動し、痛みを感じなくなるのです。痛みは身体の異常や組織のダメージを知らせるシグナルです。不快感を惹起し、気力を低下させ、活動量を減少させます。これは早く回復するために体力を温存する『休養』の指令としても役立ちます。しかし、痛みを克服しなくてはさらに命に関わる深刻な事態に陥るという危機的状況では、痛みに悶えているだけでは問題です。そこで脳が発達させた回路が、痛覚除去の神経回路『オピオイド系』です。一時的に痛覚を無効化することで、迫る危機を回避する確率を高めるわけです。たとえば、放尿や排便、性行為では、組織が極端な摩擦を受けるため、本来ならば激痛が走るはずです。しかしオピオイド系がこれを緩和するのです」オピオイド