本当に面白いのは

「このごろ どうされてますか」/わたしの問いに あなたは叱られた子のように頭を掻き/「毎日家に居て やることがなくて困ってますよ」/「絵はいかがです」/「前ほど面白くなくなっちゃった」/「ゴルフは」/「これも おもしろくない」/「じゃ 何が面白いんですか」/一瞬の間を置き あなたはわたしの耳に口を寄せ ささやいた/「仕事 本当におもしろいのは 仕事だけ」/稲妻となって わたしを打つ言葉であった/あなたは黙り あなたの悪戯っぽい瞳にも きらりと稲妻は光った/城山三郎さんが、本田宗一郎さんとのやりとりを詩にしたものである。そう、道楽も趣味も、最も打ち込めるものなしにはおそらくは面白くないのだ。「本当に面白いのは仕事だけ」と言いきれるようになりたや。