幸福の本然

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町田康さん。「来る日も来る日も冷や飯と漬物ばかり食っているからたまに食う御馳走が旨い。砂漠を彷徨って飢えているからコップ一杯の水がこの上なく有難い。いつも負けてばかりいるから思うような目がでると嬉しい。餓え飢え欠乏しているからこそこれらを得て嬉しいのであり、満ち足りていれば嬉しくもなんともない。これこそが幸福の本然である。だから物質的精神的富は人を幸福にせず、ハードルが上がり、幸福の可能性が減るので、逆に不幸にするとも言える。一本のフライドチキンと一杯の麦酒で、『至福』と感じ入っている人間に比べ、珍味佳肴、極上の葡萄酒を前に、『いまいちガツンとこないなー』と呟いている人間は、幸福を感じる範囲が随分と狭い。という訳で絶対的幸福は存在しない。にもかかわらず人はこれがあると信じ、これを獲得しようとする」幸福。