がんじがらめになると

小澤征爾さん。「フランス語で、スープルって言うと、リラックスして、脱力してって……。苦労して汗水たらして指揮してた。『海』、ドビッシー。ぼくそんなの指揮したことないからさ、がんじがらめになっちゃってるわけよね。ドビッシーが書いたもの、ぜんぶ、きまじめにやってて、ここはああやるべきだ、しかも先生が教えてくれるわけ。フランス音楽だから、ここはこうなるべきだ、とか。フランス音楽だから自由じゃなきゃいけない……。すると今度、こっちは、ノン自由になっちゃうわけよ。で、大先生、ミュンシュが来てくれたから、聞きに行ったら、『スープル』と。それから何年もかかった。そのスープルになるまでにね。人間てのは、がんじがらめになるとだめだね。ぼくの知識と、人が教えてくれたことで、がんじがらめになったわけよ」スープル。