不安や悩みを客観視

f:id:nakatomimoka:20200626113509j:plain

午堂登紀雄さん。「僕たちの集中力を阻害するものに、不安や悩み、心配事があります。仕事、家庭、家族、恋人、お金、子供の教育、人間関係、容姿、将来のことなど、僕たちは日々なんらかの不安なり悩みを抱えています。こんな状態だと集中することができないし、前向きな発想も湧いてこない。そこで、そんな気になっているコトを、ノートに全部書き出すのです。いったい何が不安なのか。何を悩んでいるのか。事柄だけでなく、理由も書き出し ます。そうやって自分の心にひっかかっていることを文字として見えるようにすると、意外にも冷静に見ることができるようになります。不安の解消はできなくても、少なくとも自分がなぜ落ち着かないのか、その原因は何かがハッキリ分かる。森田療法でも、日記に不安や悩みを書き出すことを勧めています」書きだす。

抜苦与楽

f:id:nakatomimoka:20200703221304j:plain

鈴木祐さん。「幸いにもブッダは、『悟り』のほかにも、ゲームのなかで幸福を最大化する方法を提案しています。それが、『抜苦与楽』です。これは、『悟り』と並ぶ仏教の基本テーマで、文字どおり『万物の苦しみを取り除き、安楽を与えること』を意味します。要するに、自分はもちろん他人のために生きよ、とブッダは説いたわけです。この主張は定量的なデータで裏付けられた事実です。他者への貢献こそが普遍的な人類の価値観だと明らかにした、ミシガン州立大学のメタ分析。遺伝子が定めるルールのなかで幸福を最大化させるには、『抜苦与楽』が最適解なのでしょう。かつて学生から、『人間は何のために生きているのか?』と質問されたアインシュタイン博士は、こともなげに答えました。『他人の役に立つためです。そんなことがわからないんですか?』」抜苦与楽。

遊びをせむとや

f:id:nakatomimoka:20200624124451j:plain

鈴木祐さん。「人類は大人になっても遊ぶ必要があるのです。状況が違っても、『遊び化』のパターンは変わりません。価値にもとづいたプロジェクトを決め、ルールを設定し、自分にフィードバックを与えればいいのです。その目的は、人生に遊びの感覚を取り戻し、遠くなった未来を現在に近づけることです。このポイントさえ見失わなければ、どんな状況にも対応できるでしょう。カール・グロースは、1901年の著書、『人間の遊戯』のなかで、ほかの哺乳類の幼児期にくらべて人間の子どものほうがよく遊ぶという事実に触れ、『人類は他の種よりも複雑な生存スキルがかかせないため、大人になっても遊びを通して認知機能を発達させ続けねばならないのではないか?』と推測しました。狩猟採集民の多くが老人になっても遊び心を保ちながら生きているのは事実」生まれけむ。

未来を刻む

f:id:nakatomimoka:20200627131429j:plain

鈴木祐さん。「『締め切りを作る』という手法も似た発想に基づいています。期日がない仕事でもあえて『今日の10時までにやる』と決めれば未来の姿が明確になり、やはり現在との心理的距離が縮まります。その分だけ、気を散らさず目の前の作業に取り組めるわけです。時間でなく『作業』を区切っても似た効果は得られます。ゴールがあった場合、小さな目標に分けていくのが定番のやり方です。俗に『逆算思考』と呼ばれる手法で、大きなゴールを設定するよりも未来がクリアになり、モチベーションが上がりやすくなります。かように人生をルール化する方法は多様ですが、すべてに共通するのは『未来を刻む』というポイントです。時間を区切るにせよ作業を分けるにせよ、いずれも未来と現在との心理的な距離を縮める効果を持ち、いまここの感覚が生まれます」逆算。

やりとげた作業を書き残す

f:id:nakatomimoka:20200626110829j:plain

鈴木祐さん。「フィードバックに効果的なのが、オハイオ州立大学の藤田健太郎氏が考案した『アカウンタビリティーチャート』です。①ノートの真ん中に区切り線を引く。②右側に一日の作業時間を90分区切りで書く。③左側に実際にこなした作業内容を書く。実験によれば、この作業を続けた者は目標の達成度が有意に向上しています。その理由は、第一に『やりとげた作業を書き残す』という行為が、自分へのフィードバックとして働く点です。プロジェクトの進捗が記録として残るため、チャートをながめるだけでも脳は満足感を得られます。第二に、『実際の作業にかかった時間』を記録していくことで、少しずつ時間の見積もりがうまくなっていく点。記録を続けるほど正確な所要時間を出せるようになるため、未来の姿はクリアになっていきます」記録。

農耕による未来の出現

f:id:nakatomimoka:20200624114404j:plain

鈴木祐さん。「農耕の出現により、人類の生活は一変します。しかし、農耕は様々な弊害も生みました。代表的なのは『栄養不足』でしょう。初期の農耕はムギやヒエなどの穀類がメインで、狩猟採集民が主食にしていた根茎類や種子類ほどビタミンやミネラルを含んでいませんでした。さらに、農耕は『社会階層の出現』という副作用も生みました。そして、最も現代人への影響が大きいのが『時間感覚の変化』です。ここにおいて、人類は初めて『遠い未来』を思い描かなければならなくなります。ところが人類の遺伝子には『遠い未来』に対応するシステムが備わっておらず、『不安』という短期用のプログラムを駆使しながら、どうにかやりくりしていくしかありません。『農耕による未来の出現』は、あくまでももっともらしい仮説の一つです」未来を持った我々。

不安は未来の遠さにある

f:id:nakatomimoka:20200624114054j:plain

鈴木祐さん。「『現代の不安における遺伝のミスマッチとは?』の問いは、言い換えれば、『私たちは何にそこまでおびえているのか?』ということでもあります。不安定な仕事、体調の衰え、金銭的な問題など、一見ばらばらに思える不安の原因には、どのような共通項があるのでしょうか? その答えは、ひとことで言えば、『未来の遠さ』です。人類に備わった『不安』は、あくまで目の前に迫った危険への対策をうながすためのシステムです。いまの瞬間よりも時間軸が未来にある危険に対しては、そもそもプログラムが対応していません。その結果として、遠いアラームの誤作動が引き起こされるわけです。いったんこうなると、やがてアラームの誤作動は常態化し、自分が何におびえているのかすらわからなくなってしまいます。」『ぼんやりとした不安』の正体は。