理を超越した名人の断

升田幸三さん。「秀才というものは、物事の処理は実に上手だとわたしゃ思う。しかし、上手より抜け出ないという所がある。上手というのは、頭がよければ、その段階までは行けます。ところが名人というのは、頭が悪くてはいかんけれども、いいだけじゃなれない。というのは、ここに一大変化がある。戦国時代なら戦国時代に、どの国と国交を結び、どこと断絶すべきか、そういうどうあるべきかという一大決断を迫られているとする。そういう場面に遭遇したとき、わたしゃ上手じゃハタと決断に困るだろうと思う。それが名人だとすぐに断がでてくる。それというのも、上手は、いままでに習い覚えた理論に執着し、それを羅針盤にして動く。理詰めのほうは専門なんですから。しかし名人になると理を超越し、理論を破って断が出来る」名人をめざして。