玄侑宗久さん。「煩悩そのものが、『宇宙意識』へ拡大する噴射力になるっていうのも、なんだかイイでしょ。だって煩悩がなかったら、戒律も意味がない。戒律によって実現する禅定も、禅定によって得られる智慧も、煩悩あってこそ到達できるものなわけですよ。戒・定・慧という仏教の『三学』の、根底を支えているのは煩悩です。なかでも一番しぶとい煩悩が『自己意識』なんだと思います。人間だけが獲得した自己意識が煩悩なんて、ショックだと思いますが、だからこそ、それが反転して素晴らしい体験もさせてくれる。そういうことじゃないでしょうか。自己意識が宇宙意識まで拡大すること、換言すれば自己超越を通しての自己実現、そこにこそゆるぎない極楽状態があるのかもしれません」むつかしいけれども、なんとか達してみたいと思うこの境地。
