ある本に、神様に存在を示して貰うよう依頼する話が載っていた。わかるものか。それに、神様を試すなんて不遜じゃないか。仕事でひどく疲れることがあった。その日にやるべき作業は山積しているが机に向かう気になれない。外に出て、見知らぬ路地を歩いていると、しゃれた感じの喫茶店に出会った。ケーキと焼き立てのパンを置く店で、喫茶もあったが誰も客はいない。まだいけるかと聞くと大丈夫だと笑顔で店員さんが案内してくれた。ケーキセットを奢った。そのくらいは許されるだろう。珈琲の追加を百円でお替りして、美味しそうだったクロワッサンを食べようか迷ったが、そこまでは許されまいと思ってやめた。会計をすると、笑顔の店員さんがなんと袋に入れたクロワッサンをサービスです、といって渡してくれた。ああ、そうか。やっぱり神様はいるんだ。
