聴き手を命懸けで

nakatomimoka2015-08-16

伊藤恵さん。「ブレンデルシューベルト最晩年の三大ピアノソナタを弾いたリサイタルだ。特に『第20番イ長調』の第四楽章で涙が止まらなくなり、公演が終わってからも2時間くらい泣き続けた。ブレンデルは自らの命を削って、聴き手を命懸けでシューベルトの地獄の世界へと連れて行った。今まで自分が音楽だと信じてやっていたことは、ただピアノを上手に弾くだけのママゴトにすぎなかった。そう痛感した。ブレンデルの作品解釈には暗い部分が多い。孤独や絶望、死の表現が実感を伴って一気に迫ってきた。自分はそんな次元に到底達していない。生きるとは何かを初めて問われた。ブレンデルシューベルトの演奏を可能な限り聴いた。77歳での引退公演も欧州まで聴きに行った。すべてを捨てて音楽に取り組まなければ世界を表現できない」そこまでの。