先取りされた未来

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内田樹さん。「先取りされた未来というのは、死んだ後の私。やっぱりそこまでいかないと、今生きている意味を構築できないような気がするんです。今、目の前にグラスが二個あるとしますね。こっちは一万円のバカラのグラス、こっちは二百円の強化ガラスのグラス。こっちは落とすと割れてしまう。さわった時の感触や造形はまったく同じ。そういう場合でも、扱い方が変わるでしょう。なんでバカラは丁寧に扱って、こっちは雑に扱うのかというと、バカラのグラスはいつか割れると思っているからですよ。ある日、するっと手から落っこちて、ぱりん、と割れた瞬間の『あ!割れちゃった!』という時の、失望と喪失感を今先取りしているわけですよ。バカラのグラスはそれが割れた時の喪失感が上乗せされて、この価格設定がなされているわけですよね」死を思えば輝く。