三行で撃て

近藤康太郎さん。「一発外すと、次はない。鹿や猪、鴨を追っている猟師は、それが体でわかっています。自動式銃だと三発は連続して撃てるのですが、最初の弾を外すと、次はまず、ないですね。山に、空に、獲物は逃げていく。文章と似ています。最初の一文、長くても三行くらいでしょうか、そこで心を撃たないと、浮気な読者は逃げていきます。続きなど読んでくれない。野球の配球で言えば、一球目に、ビーンボールすれすれの、胸元をつくストレートを投げ込んでいる。捨て球だから、ボールでいい。バッター(読者)は、のけぞるだろう。しかし、こちらが、なにかしら、ものすごい熱量でいいたいことがある、そのことだけは、分かって貰える。捨て球とは、いわば伏線だ。書き出しの、のけぞらせる一行目は、『銃』である。それは発射されなければならない」三行。