手綱をゆるめて

亡くなられた岩城宏之さんが帝王カラヤンから教わった指揮法についての教えに、「指揮はドライブじゃなくてキャリーだ」というのがあったという。ドライブというのは手綱を締めて、鞭をふるって、100%コントロールするというもの。馬は面白くないけれども、言われたとおりにいっているという状態。キャリーというのは、手綱をゆるめて、馬は人間なんか乗っていることを忘れてしまって、好き勝手やっているようにみえて、実はコントロールしているという状態だという。岩城さんは、若い頃は指揮を200の力を出してやっていても、オーケストラには10も伝わっていなかった。年をとってからは、いわば合気道のように、相手に力を出させてそれを活かす、跳ね返して大きくするというようなことができるようになったと言っておられた。手綱を、ゆるめて。