人の分け隔てをしない人

藤沢武夫さん。「本田も私も無我夢中で仕事をしていた時代ですし、遠くのほうから命令しているのではなく、まっさきに飛び出していって、自分の体で教える。おれにできるんだから、お前だってできるんだといった調子です。夜、コンロを囲んで、何時間も話し込んだりしたものです。本田って人は、自分が苦労しているから、人の分け隔てをしない人なんですね。白子工場をつくったとき、まだ機械もろくに入っていないのに、従業員の便所を水洗にして、石鹸を置かせたのは、本田です。食べるところと同じように、出すところもまず清潔にしなきゃいけないというのです。金がないときに、そこまでしてくれという。そんなところが、私をますます本田かぶれにさせていくわけです。」小さいことのようながら、人をかぶれさせるまでの、人間的な、何か。