黄金の時

nakatomimoka2010-08-21

穂村弘さん。「選手のプレイ自体が生み出す『驚異』が信じられず、外部の物語による『共感』を付与しないと視聴者は感動できないと思っているのだ。その観点から『スラムダンク』は凄いと思う。残り時間0秒で信じられないような逆転シュートが入った瞬間、登場人物達は全員驚愕と畏怖の表情をしている。『驚異』に触れてしまった者の顔だ。一瞬の後に周囲の人間たちが歓喜と絶望の表情に変わった後も、シュートを放った本人だけは『怖ろしい』『理解できない』という顔のまま。『驚異』から『共感』へ移行する心の時間差が表現されているのだ。逆転勝利というこの世の価値と共に喜びがやってくる前の、この『怖ろしい』、『理解できない』瞬間こそが黄金の時ではないか。黄金の時の別名は『詩』。ファンタジスタとは『詩』を生み出す者のことだろう」驚異のまま。