玄侑宗久さん。「貪（とん）・瞋（じん）・痴（ち）というのを仏教では３毒といいまして、私たちの眼を曇らせる最大のものと考えます。貪はむさぼり、瞋はいかり、痴はやる気のない、さぼり気分でしょうか。丁度『西遊記』の猪八戒、孫悟空、沙悟浄はこの三つを人格化したものですが、こういうものを乗り越えて智慧を磨き、やがては『行』も滅尽して涅槃に到る。そこで実現するのは、もしかすると私たちの眼が、宇宙そのものの眼になることではないかと思うんです。お釈迦様は、人間でなければ涅槃に到ることはできないと仰います。それは逆にこの煩悩としての自己意識のせいかもしれないんですね。だって、我々の持ってしまった小さな小さな自己意識が、宇宙的に拡大することでもあるんだと思うんですよ、解脱って」そこにいけばどんな夢も。
