無常を理解し我執を捨てる

斎藤環さん。「哲学的に幸福はどのように可能となるか。最終的な解答はすでに存在していると私は考えている。原始仏教の教えを受け継いだ『テーラワーダ仏教』の教えである『無常』がそれにあたる。もちろん私自身が『無常』を十分に理解しているわけではない。なにしろ、『無常』とは、厳しい修行を何年間も続けてようやく悟りを得た人だけが理解できる境地であるらしいのだから。では、『悟った人』とはどういう人なのか。私なりの理解では、『すべてが空である』ことを完全に理解した上で、生きる過程そのものを楽しむことができる人、ということになる。さらに、『無常』の理解がもたらすものの一つに、『我執を捨てること』がある。多くの不幸が我執に由来することを考えるなら、完全に我執を捨てられたら不幸も消えることは間違いない」我執。