桜井章一さん。「勝機にも濃淡があって、一番強い勝機から2番目、3番目、4番目、5番目という具合にあるのだ。そこで勝機をつかんだり離したりの凄絶な駆け引きがあって、それは当人同士にしかわからないものだったりする。もっとも羽生さんをはじめとするトップ棋士たちは、『勝機をつかむ』のではなく、『勝機に触れる』という感覚を自然に持っていると思う。変化が激しいので、勝機は現れても一瞬のうちに抜けていってしまう。だからつかまないで触れるのだ。これは頭で考えてできることではない。麻雀に限らず勝機やチャンスといったものは、つかもうとする意志を働かさないほうがいい。仕事でも勉強でもそれは同じだ。そこで何かをつかもうとすると、カラダに力みが入って結果的にあまりいいことにならないのである」つかもうとせずに、触れておく。