行きて帰りし物語

nakatomimoka2017-11-26

大塚英志さん。「物語の文法の一番の基本は二つある、と考えてください。一つは、『欠落したものが回復する』というパターン、もう一つは、『行って帰る』というパターンです。『行って帰る』という枠組みが物語の最も基本的なパターンであることを指摘したのは、『指輪物語』の訳者としても知られる、故瀬田貞二です。瀬田はこの『行って帰る』枠組みを『生きて帰りし物語』とも呼んでいました。『未知のもの』に触れるだけなら、行きっぱなしでいいわけです。しかし、『帰る』ことによって初めて、元いた場所の意味が確認できるわけです。 つまり主人公にとっての、『日常』や『現実』の確かさが、このようなプロセスを経て実感されるのが、『行って帰る』物語の主題なのです。いわば、『現実を再発見するのが『物語』だ、とさえ言えます」行ってきて、帰る。