読む媚薬

nakatomimoka2018-04-07

島田雅彦さん。「『好色一代男』は、読者を、あたかも自分がモテまくり、快楽を伴う恋愛状態であるかのように錯覚させるストーリーです。恋愛文学あるいはポルノグラフィーは、多かれ少なかれそうした効果を持ちますが、読めばモテの追体験ができ、エロス的な刺激がもたらされるのです。もちろん西鶴はこの効果に十分意識的でした。偉大なる先達の仕事が前例にあるからです。その前例とは、紫式部の『源氏物語』です。そもそも『源氏物語』が書かれた経緯のひとつは、一条天皇に仕える藤原道長が、紫式部という才女に目をつけ、これを宮廷に送りこみ、物語作者としての才能で夜ごとうっとりするようなラブストーリーを紡ぎ出させれば、それをよむ女官たちはきっとその気になり、ひいては一条天皇も子をもうけるはずだーと画策したことにあります」文学の伝統は色恋。