町田康さん。「所謂、悟り、なんかもそうなのではないか、と類推する。『あ、悟った』というのは一瞬のことで、その直後にまた混迷が始まる。しかし、その悟った状態を何とかしてもう一度、掴むために、そして少しでも長引かせるために、各自がそれぞれの方法で修行に励む、みたいなことではないだろうか、と思うのである。人間の社会的な地位や名声というものは人間のレベルの高低の基準として当てにならない。となれば、各人は自分のレベルをどうやって綜合的に判断すればよいのだろうか。というとひとつ間違いのない方法がある。それは、『普通』という判定である。普通というのは大多数、もっとも数が多い、という意味での普通と人間のそもそものおもうことすることの範囲内、という二つの意味での普通で、与えらえた諸条件の話をしているのではない」普通。
