上機嫌という贈り物

矢野和男さん。「アランはその有名な『幸福論』において、意志を持って機嫌をよくし、自ら喜びをまわりに広めることの重要性を繰り返し強調している。たとえば、『悲観主義は気分に、楽観主義は意志による』もので、『上機嫌という贈り物は、やりとりすることによって何倍にも膨らむ宝物である』とする。そもそも、周囲に元気をもらうだけで、自分が周囲を元気にしない人(あるいは周囲の元気を奪う人)は、集団の幸せにただ乗りしている人である。ただ乗りという一方通行な関係は不安定で長続きしない。ただ乗りしている人は、集団の幸せ度を単に下げているのであり、そのような人が増えると全体の幸せ度が下がる。人を明るく元気にし、ポジティブな影響を与える動きは、集団の中で循環するのである。その意味で、幸せは天下のまわりものである」だよな。

決定麻痺の罠

橋本之克さん。「行動経済学における発見の一つに、『決定麻痺』があります。人は選択肢が多すぎると、その選択を先延ばしにしたり、選択すること自体をやめてしまったりするというものです。マクドナルドが2015年に日本全国で行った『新バリューセット』のキャンペーンでは、1000通り以上に選択肢が広がることをアピールしていたのです。実際、このキャンペーンは早々に終了してしまいました。逆に、この心理を踏まえて利益をあげる企業もあります。P&G社が、26種類あったシャンプーを15種類に絞って、売り上げを10%もアップさせた例があります。選択肢は多ければ売れるというわけではありません。これと似た現象に、『決断疲れ』というものがあります。長時間にわたって選択や決定を繰り返すと的確に行えなくなるのです」絞ったほうがいい結果。

脳が過労状態に

橋本之克さん。「脳科学者からは、Webサイトを見る行為自体が脳を刺激し、やめられなくなる危険があると指摘されています。ドーパミンが影響するのです。見続けると、脳がダメージを受け、脳が過労状態となります。五感からの情報は、脳内の前頭葉と呼ばれる場所で取捨選択され、整理されますが、情報が多すぎると処理しきれずに、未整理の混乱状態になるのです。すると脳内で、思考や意思決定、記憶や感情をつかさどる前頭前野の機能が低下します。そして、単純なミスが増える、物覚えが悪くなる、イライラして怒りっぽくなる、意欲や興味がわかないなどの問題が生まれてしまうのです。買い物の情報収集が目的なのに、いつのまにかWebサイトを見続けることが目的のようになり、ただただ見続けます。そして、脳は過労状態になってしまうのです」見なくする。

三角形の構造

矢野和男さん。「幸せな集団では、人と人とのつながりがフラットで網目状になっている。つながりがフラットである組織では、ソーシャルグラフにおいて三角形ができやすい。三角形とは、あなたのつながっている人を2人選んだときに、その2人どおしもつながっているということである。あなたのまわりにこのような三角形の構造があるかが、あなたが幸福を感じるかに強い影響があることが、大量のデータから見出される。この三角形の関係をつくるにはどうしたらどうしたらいいか。あなたが発起人になり、知り合いを複数人呼んで、会食や飲み会を行えばよい。このようなインフォーマルな会合によって、人と人がつながっていく。これによって三角形が増えるのである。花見や同窓会はこういう効果を持っている」一緒に食べて、知り合いを引き合わせて三角関係を作る。

心の資本HERO

矢野和男さん。「幸せは訓練や学習によって持続的に高められる。幸せとは身につけられるスキルや能力の一種である。スキルとして身につけられる持続的な幸せの姿を、より具体的に示したのがフレッド・ルーサンス教授である。持続的で学習可能な幸せを表す重要な尺度が、既に複数見出されており、それが以下の四つであることを明らかにした。第一の力:HOPE(自ら進む道を見つける力)、第二の力:EFFICACY(現実を受け止めて行動を起こす力)、第三の力:RESILIENCE(困難に立ち向かう力)、第四の力:OPTIMISM(前向きな物語を生み出す力)。ルーサンス教授は、この4つを合わせて「心の資本」と呼んだ。前野隆司教授の『幸せの4因子』(「やってみよう」「ありのままに」「なんとかなる」「ありがとう」)と、概念的には重なり合うところが多い」まあね。

享楽の適応

矢野和男さん。「リュボミアスキー教授によれば、幸せは、第一に、遺伝や幼児体験に影響を受ける。これは『変えにくい幸せ』である。この影響で、幸せのおよそ半分が説明できるという。第二の要因は、むしろ、『変わりやすい幸せ』だ。たとえば、宝くじが当たったりといった、外部から一方的に与えられる環境変化は、その直後に享楽的な高揚感を生むが、極めて短時間のうちに元のレベルに戻ってしまう。心理学者は、これを、『享楽の適応』と呼ぶ。これは一時的なものであり、長い目で見ると、その人の幸せには変化をもたらさない。幸せ全体への影響は、10%程度と推定されている。第三の要因は、努力や学習によって変えられる幸せだ。この幸せは、一種の能力、スキル、習慣として捉えるべきもので、この能力を習得するとこの幸せは持続する。40%程度」ふむ。

幸せは周囲の人たちから

矢野和男さん。「データが示す最も重要な結論は、『あなたの幸せは、自分一人では生み出せない』ということである。むしろ、『あなたの幸せは、自分が関わる周囲の人たちから与えられるものだ』という事実だ。あなたは、会話の相手からエナジャイズされることで幸せになるのだ。従って、あなたが幸せになるためには、人を幸せにする集団の一員となることが必要だ。幸せな集団とは、『周囲を元気にする人たち』である。集団内で自分にもできることはある。自分が属する集団の幸せに、あなた自身も重要な影響を与えているからだ。あなたが、自ら周囲の人たちに幸せな影響を与え、元気を与えれば、属する集団をより幸せな状態にすることに貢献できる。あなたが直接関わらない人の幸せにも、あなたの行動の影響が及ぶ」一人での幸せも、あるとは思うが。