永遠の文明はない

辻原登さん。「時代区分への関心は時代の変貌などを知る上で必要でしょうが、物語を享受する上ではこだわってはいけない。書き手は同じような近代小説の手法で描いている訳ですから。18世紀半ばの上方を舞台に選んだのには理由があります。日本語を使った物語や詩などの日本独自の文明が成熟し、らん熟したのが奈良時代から丁度千年にあたるこの時期だったと考えるからです。黄河やエジプトの四大文明にせよ、永遠の文明はなく、全て滅びます。文明と呼ばれるものが日本にあるなら、8世紀に始まり18世紀に頂点を極めたこの日本文明こそがスケールこそ小さいものの完成度は高い文明だったといってよい。それ以降は幕末から明治維新を経て欧米の文明が流入し、その導入にすぎなかったともいえます」意識したことがありますか、日本文明の成熟期。