テクノロジーと退化

nakatomimoka2010-08-11

島田雅彦さん。「手っ取り早く、わかりやすく、扱いやすいもの……それはみな退屈だ。CG映像の薄さ、パワーポインターのプレゼンテーションの味気なさ、シンセサイザーの陰影のない音に飽きた頃、おのずと私は60年代の映画や文豪の講演テープや蓄音機の音に含まれている揺らぎ、ノイズに心地よさを感じるようになっていた。手先、指先に物足りなさを覚え、何かプリミティブなことをしたがっている自分がいた。電磁波を発したり、コードがついているものではなく、もっと武骨な自然に触れたかった。それは本能の欲求だった。衣食住、交通通信、文化活動のあらゆる面で、私たちは自分の体や頭を使わなくなった。(略)そんな受動的な暮らしを続けるうちに、おのが思考能力、身体能力をすっかり衰えさせていたのである」生身の能力を退化させぬように。