貫くものを持って我が身を営む

玄侑宗久さん。「西洋近代科学は全体を個に要素分解していくことで万物の法則を解き明かそうとしてきました。仏教では、全体から独立して固有の性質を持つ個というものは認めません。個は全体の中で活かされ、一方で個のあり方が全体に影響を及ぼします。『経営』という言葉は仏教用語で、もともと『経』とは『スートラ』といって数珠に通す糸を指し、一本貫くものをもって我が身を営むことを意味しました。これを会社や組織に転用すると、組織にも一本貫くものがあって、それが毛細血管のようにすみずみに張り巡らされ、運営される意味になる。また、世の中や身の周りで起きることは、全て因果律で割り切れるものではありません。共時性や偶然的なもの、そういう説明がつかないものを我々はご縁と呼ぶわけです。」貫くものを持って。