心と心が直に繋がる

nakatomimoka2011-02-12

千宗屋さん。「型に従い、繰り返しを含む点前の所作には、それを行う者、見る者の身体感覚を同期させていく作用があるように思われます。そしてダメ押しのように、点てられた一碗の茶を、全員が回し飲む。小さな茶室の中で主客が膝を突き合わせ、火と水を囲み、呼吸を合わせ、言葉を制限されたギリギリの緊張感の中で一碗の茶に集中していく。そのどこかで一瞬、日頃人間同士を隔てている身体や言葉が取り払われて、心と心が直に繋がっている、と感じられる瞬間が出現するのです。一瞬の後にはまた個人個人に分離してしまう儚い交わりですが、その瞬間を束の間でも成就させるために、茶事の場がある。茶事とは、人間が生来持っている『他者と一体になりたい』という困難な願望を成立させるための、非情によく考えられたシステムなのです」奇跡の一瞬を。