決然とかつ躊躇いながら

nakatomimoka2011-08-21

内田樹さん。「多田先生は『動きの終わった状態に向かって自分を放り込む』という表現をされたことがあった。韓氏意拳の光岡英稔先生は、『リールが釣り糸をたぐりよせるように動く』という言い方をされたことがある。これはどちらも、『未来がすでに既決であるようにふるまう』ということである。しかし、運動の精度を上げるために、『できるだけ決定を先延ばしにする』のはマイクロ・スリップ理論の基本である。イチローのバットはインパクトの直前までためらっている。あたかも未来がすでに決定しているかのように『決然と動く』ということと、運動の方向や速度を最後まで未決定のまま『ためらいながら動く』、ということはどう考えても矛盾する。けれども、運動の精度を上げるためには、この矛盾する要請に同時に応えなければならない」同時に。