それとも書きたいのか

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小野正嗣さん「『作家に?私が若いころは誰もがロック・シンガーになりたいと言ったものです」とカズオ・イシグロはほほえんだ。満場の観衆がどっと笑った。まだノーベル賞を受賞する前、『忘れられた巨人』の翻訳刊行に合わせ、2015年6月に東京で開催された講演会でのことだ。『作家になるには?』という質問に答えての発言。『自分に問うてほしいのです。<作家>になりたいのか。それとも書きたいのか。前者ならやめたほうがいい。もし後者なら書き続けてください。(中略)人は作家になるのではない。書くことによって、つねに自分とは他なる者になる。イギリスと日本の狭間で自分とは何者かを真摯に問い続けてきた作家の柔らかい声には、そのような真実の響きがあった」ステータスとしての作家なのか、書くための必要性としての作家なのか。