ウサギが欲しいのではない

國分功一郎さん。「ここからがパスカルの分析の面白いところだ。人間は退屈に耐えられないから気晴らしを求める。賭け事をしたり、戦争をしたり、名誉ある職を求めたりする。それだけならまだわかる。しかし人間のみじめはそこでは終わらない。おろかなる人間は、退屈に耐えられないから気晴らしを求めているにすぎないというのに、自分が追い求めるものの中に幸福があると思い込んでいる、とパスカルは言うのである。狩りの例を通して見てみよう。狩りに興じる人たちについてパスカルはこんな意地悪なことを考える。ウサギを手渡すのだ。その人はイヤな顔をするに違いない。なぜウサギ狩りに行こうとする人は、お目当てのウサギを手に入れたというのに、イヤな顔をするのだろうか。ウサギ狩りに行く人はウサギが欲しいのではないからだ」何のため。