原初の豊かな社会

國分功一郎さん。「人類学者マーシャル・サーリンズは『原初のあふれる社会』という仮説を提示している。狩猟採集民はほとんど物をもたない。道具は貸し借りする。計画的に食料を貯蔵したり生産したりもしない。なくなったら採りにいく。無計画な生活である。彼らはしばしば、物をもたないから困窮していると言われる。計画的に貯蔵したり生産したりする知恵がないために十分に物をもっていないとして、『文明人』たちから憐みの眼で眺められている。しかし、これは実情から著しくかけ離れている。彼らはすこしも困窮していない。狩猟採集民は何ももたないから貧乏なのではなく、むしろそれ故に自由である。『きわめて限られた物的所有物のおかげで、彼らは日々の必需品に関する心配からまったく免れており、生活を享受しているのである』」持たない自由。