精進料理の本質

森田真生さん。「精進料理の本質は、むしろ食事に対する姿勢や作法そのものにあることを教えてくれたのが吉村昇洋さんだった。守るべき作法の一つ一つはシンプルである。食事中にしゃべらない。箸や器を両手で扱う。口に食べ物を入れているあいだは、手を膝の上に置く。こうした作法を守っていると、食事中の意識はおのずから、『いま、ここ』に集まってくる。誰かとしゃべりながら、あるいはテレビを見ながら、普段はいかに『心ここにあらず』の状態で食事をしていたかに、あらためて気づかされるのだ。『心ここにあらず』なのは、食事のときだけではない。明日の心配や昨日の不安など、頭のなかはいつも忙しない。口のなかで料理をごちゃ混ぜにしているのと同じように、頭のなかも、無数の雑念で混乱しているのだ」食事で、喋らない、両手で、手は膝の上にを。