型だけが残る感覚

下條信輔さん。「『ゾーン』に入るときに、自分を消すというか、放り投げるような状態だと為末さんは言われた。ある有名な歌舞伎役者さんが言うには、大きな代役を長期間されたときに、今までで最高の舞台になったというんです。なぜかというと、代役というのは、自分ではなくて、本来演じるはずの人にならなければいけないので、自分が消えてしまう。その時、完全に型だけが残ったという感覚になったといいます。何度か経験したことのある生涯最高の舞台と同じ感覚だったと。そこで話し合ったのは、伝統芸能というのは、無意識を意識的にコントロールする術を伝統的に編み出していて、その一つは、『型の習得』なのではないかということなんです。型を習得することによって、自分自身の無意識を意識的にコントロールする術があるのではないか」型の修得。