手を暖めると心も

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堀田秀吾さん。「温泉旅行に行くとストレス軽減効果があることが証明されています。いざ温泉に行くとなると一大事。そこでご紹介したいのは、手をお湯につけるという『手浴』です。実は医療現場から生まれたもので、お風呂に入れない患者さんにもお風呂に入ったのと同じような効果や感覚を味わってもらうために実践されているものなのです。38度の温水で手を温めると、患者の痛みが緩和したり、爽快感が増加したり、前向きな言葉を発するようになったり、病気の回復に対するやる気も向上した、と報告されています。実は、暖かさを感じる『温点』がもっとも集中しているところが、指、手のひら、そして前腕だからです。また、手の血管には交感神経支配が集中しています。たとえば、寒い時に焚火などに手をかざして温めると、心も癒されますよね」そうか。

腸は第二の脳

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堀田秀吾さん。「空腹状態を避け、腸内の環境を整えてあげると、気分が安定します。イライラの原因として大きなものが空腹です。空腹になると、セロトニンが減少します。セロトニンは心の安定と深く関係する物質です。個人差こそありますが、セロトニンが多いと心の安定感が得られ、少なくなるとイライラします。逆に言えば、空腹感がなければ、不必要なイライラを減らすことができるのです。血糖値とは、食べることによって上がるものです。つまり、血糖値が低い=空腹状態ということ。心の安定には血糖値が大事なのです。何となくイライラしているという人は、最近の食事習慣を振り返って見てください。腸の健康が皆さんの心の健康に、そして元気にも大きく関わるからです。近年『腸は第二の脳』などと呼ばれ、腸と脳の関係は大きな注目を集めています」腸。

ネガティビティ・バイアス

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堀田秀吾さん。「まず認識して頂きたいのは、脳にはネガティブな情報のほうに価値を見出しやすい傾向がある、ということです。この効果を、『ネガティビティ・バイアス』といいます。ジョナサン・ハイトは以下のように述べています。『人の心というものは、良い物に比べて、同程度に悪い物事に対して、よりすばやく、強く、持続的に反応するということが心理学者によって繰り返し見いだされている。私たちの心は、脅威や侵害や失敗を発見して反応するように配線されているため、すべての物事を良く見ようとしても、単にできないのである』。要するに、ネガティブな情報が気になるのはあたりまえのことなのです。その上で、解決法を考えてみましょう。人間関係の解決法は、『人を減点評価で見ない』ということにつきます」つい目が行ってしまいますが。

瞬間的に怒らない

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堀田秀吾さん。「日常生活であれ、ネット上であれ、他人をののしるようなことを繰り返していると、自然と『ののしり体質』になっていってしまうのです。人格は日常の積み重ねです。表面上をいくら取り繕ったとしても、日頃から『ののしりグセ』がついていれば、態度や雰囲気にあらわれるようになっていきます。ブッシュマンらの研究によると、パンチング・バッグを殴った被験者はバッグを叩くことを楽しんだものの、怒りはおさまるどころか、怒りの対象の相手、ひいては関係ない人にまで怒りをぶつけるようになったそうです。つまり、怒りの行動は一度でも表現してしまうと広がってしまうのです。したがって、イライラしたとき、暴言を吐きたいときは、瞬間的に行動するのではなく、我慢をしてください。何よりも重要なのは瞬間的に怒らないこと」一瞬我慢。

精神コンストラスティング

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堀田秀吾さん。「ニューヨーク大学のエッティンゲンとゴルウィッツアーは、『メンタル・コンストラスティング』という方法を提案・推奨しています。これは、人間は『目標達成のための障害を克服できる』とわかれば元気がでるし、克服できないと元気がなくなるので、実現したい未来と現在の障害を比べて、どんな障害があるかを知り、実現可能性の高いものを選んで実現していくことで、限りある『資源』である元気、時間、そして注意力をムダなく配分でき、目標の達成率が高くなるという考え方です。つまり、『いつか好きなことをしたい』というモチベーションと共に、今目の前のできることをコツコツこなしていくことが大事だということです。この二つがあって、モチベーションと元気を維持していくことができます」ぶつかる困難をどうクリアするか。

理由づけよりも

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堀田秀吾さん。「レゼスニエウスキーらが、米国の陸軍士官学校の生徒を延べ1万人以上、10年に渡って調査して、志望動機とその後のキャリアを記録していった所、自分の『やりたいこと』に対して、教養のため、人類のため、出世のため、などと『理由づけ』をする人ほど、長期的には結果が悪くなる傾向が出たそうです。カップスとエッティンゲンによると、50人の学生にエッセイを書かせた時、『賞を受賞すること』を想像させて書かせた被験者は、そうしなかった被験者よりも執筆意欲が落ち、エネルギーを注ぎこむことができなかったそうです。また、課題をやり終えたところを想像させてから取り組ませたところ、意欲が低下し、さらに結果の達成度も低かったということです。やみくもに大きな目標を掲げても、逆効果になってしまうことがあるのです」好きこそ。

あと10分!の効果

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堀田秀吾さん。「被験者たちが、作業を開始してしばらくすると、やる気をコントロールすると言われる側坐核の活動が鈍くなってきました。ところが、『残り時間』を被験者たちに伝えたところ、報酬感が得られると反応する脳の部位が活発になって、疲れを感じると活動が大きくなる部位が低下しました。つまり、報酬感が得られて意欲が増し、疲れも感じなくなったというわけです。作業のゴールが見えるとドーパミンが出てくるという研究もあるので、その話ともつながってきますね。私も大学で授業を教えるときに、『あと10分だよ!』などといつも声をかけるようにしています。普段の生活でも、だらだらやるのではなく、それぞれの作業の目標終了時間を決めて、できれば測りながらやるようにしてみてください」ゴールが見えるところまでどうやってもっていくか。