村上和雄さん。「そして実際、この安請け合いをバネに牛の脳下垂体との格闘が始まり、『鋭』の方法より『鈍』なやり方を積み重ねることで、私は世界初の成果を三年以内に出すことに成功したのです。もし私が、石橋を叩いて渡るタイプの、慎重で先も読める頭のいい人間だったら、おそらくいい出しっぺにもならなかっただろうし、自分の研究室から成果を出すなどと安請け合いにすることもなかったでしょう。その点で、たしかに私の行動は『軽い』というそしりを免れないものであり、けっして利口とはいえないものです。しかし、その軽さがないと、人間の行動に『動き』が出てこないのも事実です。そして行動に乏しければチャンスにめぐりあうことも少なく、そういう人の多くは失敗もしない代わりに、成功からも縁遠いものなのです」動きをだそう。