共感覚を取り戻す  

オキモト シュウさんのコミック『神の雫』を読んでいると、ワインを飲んで、その味をビジュアルに絵画にたとえるというような場面が出てくる。赤ちゃん、特に新生児は視覚や聴覚、触覚などの各感覚野が未発達で、それぞれ個別に認識することができないため、光や音、匂い、触感、自分のからだの動きの感覚の区別がつかないという。専門用語で「共感覚」というこの感覚は、成長過程で個別の需要能力を獲得することで失われていくのだが、ごくたまに、この感覚のチャンネルが育たずに成長する人がいるのだという。そういう人は、音を色で表現したりするのだという。音楽を絵画で表現する。ビジョン・イメージを文章に落とし込む。五感の感覚の回路を再びつなげる。赤ん坊の時に失ったこの「共感覚」を取り戻すことが、再び表現を、芸術を豊かにしていくのかもしれない。