難しい決断の場面では

羽生善治さん。「ある程度経験を積むと、平均点で卒なくこなすことが上手くなります。でも、その繰り返しでは思考のジャンプがなくなってしまうため、ある程度リスクを負うことも必要です。失敗した時のリスクを受け入れながら踏み込んでいく、というのが理想的な決断ではないでしょうか。決断をする時に一番難しいのは、答えがない、あるいは結論が出ない状態での決断です。難しい決断の場面では、誰しも答えを単純化したい、明確化したい欲求に襲われます。でも、あえて答えを決めず、方向性だけを決める。そうした曖昧さや漠然とした状況を残しておくことも大切なことだと思います。ある意味、それは答えを出さないことに対する不安や恐怖に打ち勝つことができるかどうかという問題です。決断の難しさというのは、心の問題なのかも知れません。」