お茶の時間

nakatomimoka2009-09-18

吉谷博光さん。「35歳の春に英国に住むことを決めた。(略)隠居の前借りと考えることにした。隠居の一日はお茶に始まりお茶に終わる。一般の英国人がするようにマグカップを満たすミルク入り紅茶をすすりながらぼうっとする。と、次第に自分の身の回りがハッキリ見えてきて、あたり前の日常というものがいかに豊かなもので満たされているかにそのつど驚くことができるのだった。皿の上に残ったミントの葉を覆ううぶ毛、窓から差し込む光で輝く20ペンス硬貨。普段から自分の目の前にある取るに足らないものごとの中に美を発見できることが新鮮だった。空気の湿気やほのかな香りまでがありありと蘇って、こんなことになぜ今まで気づかなかったのだろうと逆にいぶかしくさえ感じられる。私はお茶の時間というものを初めて知ったのだった」日常にお茶を。