人は喜んで苦しむ

國分功一郎さん。「ニーチェはこんなことを言っている。いま、幾百万の若いヨーロッパ人は退屈で死にそうになっている。彼らは、『なんとしてでも何かに苦しみたいという欲望』を持っている。苦しみが欲しい、苦しみから自分の行為の理由を引き出したい。退屈した人間は、そのような欲望を抱く。苦しむことはもちろん苦しい。しかし、自分を行為に駆り立ててくれる動機がないこと、それはもっと苦しいのだ。何をしてよいのか分からないというこの退屈の苦しみ。それから逃れるためであれば、外から与えられる負荷や苦しみなど物の数ではない。人間が行動へと移るための理由を与えて貰うためならば、人は喜んで苦しむ。実際、二十世紀の戦争においては、使命を与えられた人間たちが喜んで苦しい仕事を引き受け、命さえ投げ出した」退屈よりも苦しみを選ぶ。