他者の視点がない

為末大さん。「僕の場合は、ゴールしたあとの余韻に何か普通と違うものが残っていました。ゴールしたあと、どうも自分がすごいことをしたという感覚があって、そのあとにレースのことを思い出していくというプロセスがありました。ゾーンについての仮説を話したいと思います。おそらく重要なのは、夢中状態には『他者の視点がない』ということだと思うんです。ここで強調したいのは他者の視点があるのだけれど、それに頓着しない状態に入れることが大事だということです。他者がそもそもいない観客不在の状態ではゾーンに入れないと僕は思います。数万人の観客の中で自分自身が行為に浸りきっていくのが、スポーツにおけるゾーンとかフローと言われる世界です。常に人の目にさらされながら夢中の世界に入っていくのが、スポーツの世界の特殊なところです」人の目の中で。